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地下水道 Comments (3)
いろいろな意味ですごい映画だったと思います。もとから戦争映画は苦手なのですが、この作品はトラウマになってしまいそうなほど怖い作品だったと思います。地下の下水道の中、外にはドイツ軍がいて、いつマンホールが開いて撃たれるかわからない…下水道の中はもちろん汚物だらけで、その汚物からは有毒ガスが発生…パニックに陥り、マンホールから飛び出したり、狂ったように笑い出したり、大きな音をたてたり…自分だけが助かるように嘘をついたり…人間極限状態になれば、普通ではありえないようなことをしていく…そんなことを強く感じ、恐怖を感じました。戦争はもちろん怖いですが、人間という生き物の恐ろしさ?も同時に感じました。そして、アンハッピーなラスト…見終わっても後味が悪いし、しばらく何かをしようという気にはなりませんでした…おもわず深い深いため息をついてしまいました…
ナチス側は地下水道まで追いかけてこないので地下での戦闘はない。ひたすら汚水と有毒ガスや靄による幻覚などと戦う。そんなひどい状況を延々と見せられて、退屈でどうしたものかと思いながら観ていた。
しかし、途中でこの地下水道の行軍そのものがレジスタンス活動へのメタファーだと気づいて俄然面白く感じ始めた。
出口があると信じて入っていってしまうところも似ているし、入ってしまうと迷宮の中をさまよい目的すら見失っていくところも似ている。幻覚や幻想に襲われ、あるものは上官に気に入られようと嘘の報告をし、ある者はデマを流し、ある者は頭がおかしくなってしまう。この辺の類似性に気づいて監督の意図に気づき、なるほどそうか、と。
『それでも僕は帰る シリア 若者たちが求め続けたふるさと』というドキュメンタリー映画で、反政府デモをアサド政権に武力攻撃され、仲間を殺された若者たちが武器を手にしてレジスタンス活動を始める姿が克明に撮られていますが、今のシリアの状況を見てください。彼らが望んだ状況でしょうか?正に地獄のような出口の見えない迷宮にはまり込んでいるではないですか。ただ安全な暮らしがあればいいという大勢に人々を巻き込んで。そこまでして守るものってなんですか?って本当に思う。
地上の銃撃戦も怖いが、中盤過ぎから地下水道に入ってから物理的な閉鎖感も含めて緊迫した絶望感が増していく。
ひとのうめき声、幻覚、笑い声、下水汚物、有毒ガス、見てるこっちが吐き気をもよおすほどきついシーン。
人々も極限の状態でおかしくなる。オカリナ吹いて去り行く音楽家、裏切って爆弾を爆発させる。
出口の檻から対岸に二人が見たものは…“仲間を見殺しにするスターリン軍”
ラストは地上に出て部下を殺し再びマンホールを下りる中隊長、で幕。