ブラッド・ブレイド

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"Take heed to thyself, that thou make no treaty with the
inhabitants of the land whither thou goest lest it be cause
of ruin among you. Break down their altars, smash their
sacred stones, and burn down their groves…when they
whore themselves to their demons and sacrifice to them,
you will eat their sacrifices. And when you choose some
of their daughters for your sons, they will lead your sons
to do the same.”　　　　　．．．Ancient Settler Proverb
古い開拓者のことわざから、このスプラッターであり、グロス・アウト・ゾンビ映画が始まる。カナダの先住民である630のコミューンを形成しているファースト・ネーションズの一つ、ミクマク族に焦点を当て、英語とミクマク語を両方を話すハイブリッドな言語が映画「ブラッド・ブレイド」では使われている。ローカルなミクマク語を取り上げる大胆さは、たぶん映画史にはかつてない試みと思える。

That's why the dead keep comin' back to life. Not because of God.
'Cause this planet we're on is so sick of our sh*t.
フランス語圏であるのが分かる？　．．．舞台はカナダに実在する先住民保護区レスティグーシュ... その意味するところは何か？
映画「ブラッド・ブレイド」の監督のジェフ・バーナビーがミクマク族出身ということもあり、また1981年ケベック州警察によるミクマク保護区の襲撃の一連の事件を記録しているアラニス・オボンサウィンによるドキュメンタリー映画「レスティグーシュの事件(1984年)」に影響を受けたと語る監督。

この映画「ブラッド・ブレイド」の独特なのは、その事件と同じ年の1981年に舞台を置き、また原題：「Blood Quantum」から先祖の血統を定義するために使用される用語であることから、ファースト・ネーションズのミクマク族の人たちだけが、ゾンビ菌に耐性を持ち、その他のミクマクの血統に属さない町のコケージョンたちは感染しゾンビ化する設定になっている。　最初、差し迫ったゾンビの黙示録から町を守るために主人公のレッド・クロウ・リザベーション保安官トレイラーがゾンビに噛まれても平気で変身しないシチュエーションには、何の説明もないために違和感だけが残り、見ている側が置いてきぼりを食らった状態になっていた。　でも考えてみたら、アイルランド発のゾンビ映画「CURED キュアード」で描かれていたゾンビ菌に耐性を持つサバイバー達の物語を思い出してからは、ストーリーについていけるようになったけれど、いい知れないタイムラグのギャップだけは残ってしまう。

20分も前に息絶える主人公．．．
この映画が単純にゾンビを描いている映画としてではなくて白人が一方的な植民地主義を掲げるゲベック州政府のやり方に憤りを感じているバーナビー監督が、"社会的抗議"のノロシとして製作しているのが分かる映画で、監督はカナダの先住民であるミクマク族を勇敢なる戦士として描き、またシンガリの雄姿を潔い死をもって偶像化している。　特にトレイラーのオヤジさんが、日本刀を振り回し、片時も離さないでゾンビ野郎どもと最後まで戦ったのはカリスマぽかったし、ギミックによるスプラッターの極みのゴア表現も、例えば、ゾンビの頭をチェーンソーでぶった切る、ぶっ飛んだシーンに表れている... と、そんなこんなで見ていると結構笑いの部分も存在する。　女性がムシャムシャとあるモノを召し上がるところも...　どうぞご覧あれ⁉

トレイラーの息子のジョセフの白人の彼女が妊娠している事で、ゾンビとのハイブリッドな子ができてしまうのではという心配を含めたせめぎ合う場面や彼のもう一人の息子のライソルを潜在的な敵とみなしてしまうことで、映画は少なくともしばらくの間、トレイラーの解決できないジレンマや兄弟同士が対立する様子から古すぎて、例えに出すには、うろ覚え感バリバリの「エデンの東」など変な風に思い出してしまう。

最近カナダの映画であまり印象の良くない、一本ネジが無いような物足りなさを感じさせる映画が多い中、ゾンビを別の角度からとらえている映画として、ゴア表現をてんこ盛り盛りのわりには、嫌な気分にはされなかったのが、この映画の見るべき特徴と言えるかもしれない。しかも鮭漁が盛んな土地柄を皮肉ったハラワタを取り出された鮭が生き返って飛び跳ねるなんて、そんな演出、よくできたもんだと感心させられる。　大体、1981年に起きた事件は鮭漁の漁獲制限を設けたことが主なトラブルの原因なのに、それをプロットに付け加えたり、それだけでなく驚きのゾンビ・フィッシュって？　(ただし、鮭ちゃん達は、お飾り程度にしかご出演されません。)
それと映画を支える気の利いたロック調のフィルムスコアもこの粗削りな映画を盛り上げている。

失礼ながら、誰一人として知らないカナダの俳優さん... でも役者さんの素人っぽさが反って、シリアスさをより増す演出になっていたし、ノリノリでイケイケなところもあるので映画自体の雰囲気は結構、お気に入りですけど...
彼の映画作りの姿勢だけで、共感できるために映画のストーリーが後半に多少グダグダでチグハグさも見え隠れする場面もあるので、こんな映画を甘々で捉えるのは... あたしぐらいですから　 何か？