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破線のマリス Comments (4)
汚職疑惑を追いかけていた弁護士の不審死に関するものだったが、自分たちが騙されていたことに気付く。
放送で犯人とされた郵政省職員(陣内孝則)は左遷され、恨みを抱いて編集者に近づく。
じゃあ、誰が?
ストーリー: 40
キャスト: 70
演出: 75
ビジュアル: 70
音楽: 60
テレビ局が自分の描きたい物語を無理やり作って都合よく情報を操作したい。そんなことばかりやっているマスコミの恥部を問題にした映画なのかと思ったのだが、その後は汚職やそれに関わる殺人の疑惑が出てくるし、その事件の報道とそれに巻き込まれる被害者の陣内孝則が出てくるし。それなのに事件の真実が何かはっきりしない。だから結局何がいいたい映画なのかわからない。物語としてはちょっと破綻しているし、それを楽しめる映画ではない。
だけど黒木瞳に恨みを抱き復讐に燃える陣内孝則のストーカーぶりと、それに怯える黒木瞳の精神的に追い詰められていく様の緊迫感のある演出がいい。彼は黒木瞳の作った悪意ある作為的な映像のために勤務先からいわれのない冷たい仕打ちを受け居場所をなくし、それなのに家庭からも見捨てられてしまい、その恨みの負の力を支えにかろうじて生きている。見ていて怖さを感じるくらいだし、くだらないホラー映画よりも見ていてよほど重圧がある。人の恨みとはかくも人を変えて悪鬼にするものだという痛い描写がいいし、ストーカー行為のような荒れた行動や汚れるままの家が彼の精神状態も表す。
またその状況では冷静さを欠いた黒木瞳のやることもまた支離滅裂で痛い。反撃のつもりなのか自己正当化のつもりなのか、勝手に相手を殺人者扱いし隠し撮りし家にまで侵入しという馬鹿げた自分勝手さが、第三者的立場から冷静に見て哀れでもあり彼女の罪深さからして自業自得でもあり、そして自ら巻き起こした嵐に巻き込まれて崩壊していく人格の過程を楽しめるという意地悪な見方もしてしまう。わけのわからない映画だったのだけど、この部分の精神の崩壊していく演出だけ見れば合格点でした。物語が何かの主題をもってしっかりと構成されていれば、かなりいい映画になれただろう。
最初からサブリミナル効果を狙ったインタビュー番組を作るシーンはすごい。編集次第で見ている人が違った印象を持つテクニック。とにかく前半は凄い!
殺されたオンブズマンの弁護士を執拗に追ってる男がいると内部告発テープを受け取ったのだが、それは警察の事情聴取を受けた陣内孝則。ニヤッと笑う癖のため、それを利用した遠藤があたかも犯人であるかのような編集をしてしまう。そして彼は妻子に実家へ帰られて、地方へ左遷される。彼によってテープ提供者を辿ろうとすると、そいつは郵政省とも関係なく、かなり仕組まれたテープだとわかったのだ。
やがてハメられた陣内は黒木をつきまとう・・・完璧なストーカーとなった男に豹変したため、黒木は逆に真犯人じゃないかと疑い、プライベートまで撮られていた腹いせに陣内の荒れ果てた一軒家までも侵入して撮り返す。
警察よりもTV報道のほうが崇高なんだという自尊心。自分の報道こそが正義の姿だと勘違いした女。徐々に陣内に感情移入してしまい、黒木瞳を陥れたくなってくるほどだ。彼女は離婚した夫が再婚する事実を聞いて更に精神を痛めた。息子にも会わせてもらえなくなる。すでに自分を見失った黒木は口論の末陣内を突き落として殺してしまった・・・
自分を隠し撮りしてたのは誰なんだ・・・などと色々考えると陣内がもっとも怪しいけど、それだと面白くない。ラストには驚愕のホームビデオ撮影者が・・・さすが野沢尚だ・・・