気狂いピエロ

序盤のパーティのシーンが印象的で不穏な雰囲気もあるが話の繋がりには関係が無い。

ロードムービーに逃避行モノでミュージカルと様々なジャンルが混ざっているようで何ら関係は無くなって。

色彩が鮮やかで映像だけでも楽しめる。

ゴダールはストーリーの内容やらは評価に全く関係が無い稀な監督だと。

相変わらず天然にお洒落な雰囲気全開だが時代も70年代に近くなり服装は時代に反映されている分やはり天然に狙ってお洒落を意識していないゴダール。

ネタバレ！ クリックして本文を読む
本作は鬱映画だと感じました。重苦しい情動がうごめいております。『勝手にしやがれ』ではオミットされていた人生とか政治とか生臭いモノが胎動しており、音楽も軽快とは言えない。
物語る映画ではなく、鮮烈な色使いやコラージュを多用しているため相変わらずスタイリッシュでクールではありますが、乾いた感じはないんですよね。

『勝手にしやがれ』もそうだし、『突然炎のごとく』とか『死刑台のエレベーター』とか、ヌーヴェルヴァーグ期のフランス映画は監督の情緒から距離を置いた作りが特徴的だと感じています。しかし、本作は初期北野武ばりにゴダールの鬱々とした息苦しさや怨念のようなものがドロドロ伝わってきました。

本作では、優しさという言葉が頻出したような印象を受けます。しかし、主人公2人とも、互いに優しくできていない印象を受けました。ストーリーがほぼないので断片的にしかわかりませんが、気持ちが自分にしか向いておらず、その結果精神的な孤立を招き、心が焦げ付く。男の方は優しさに救いを求めたいが、優しくできないため優しくされることもなく、より焦燥していくような様子がうかがわれました。
ピエロというのも、関係性の中に存在しているように思えて実は存在していない、滑稽な存在という意味があるように思えました。全体的なトーンから、ピエロの悲しみというよりも、ピエロで在らざるを得ない焦りと怒り、出口が見えないヤケクソさを感じました。その結果が爆死、しかも最期は「死にたくない」と悪足掻きする滑稽な哀れさです。満たされない生をめちゃくちゃにしてやりたいけど未練タラタラなのが切ないです。

これ即ち、本作は虚無主義に蝕まれたゴダールにとっての『ソナチネ』である…と断じてドヤりたいところですが、いろいろ調べると、ゴダールが主演のアンナ・カリーナにフられた後に作ったガーエーであることが判明！なんだよ、だからモヤモヤと恨みがましいのか！乗り換えパターンでフられると自分がピエロっぽく感じますからね〜。そりゃ鬱映画になりますわな。
この視点で本作を振り返ると、途端に本作の生臭さが人間臭さに思えて、愛おしくなりました。ゴダちゃん、まぁ気持ちはわかるぜ、もっと飲みなよ…とか言って瓶ビールでも注いでやりたくなりました。

天才ゴダちゃんも人の子であります。しかし、失恋を怨念込み込みで作品に昇華し、歴史的ガーエーとしての評価を勝ち取ったゴダちゃんはさすが栄光ある天才ですね〜！

これまた詩的で刹那に生きる物語。個人的には「勝手にしやがれ」の初期衝動が好き。
たとえキスしても、況してや恋人で有ったとしても女を留める事は出来ないんやなー。それでもロマン主義で一部から全体性を引き出す事で何とか成り立つ危うさを秘めたのが愛。

みんな狂ってるし、このような世界があるのが異様。

雰囲気が異様で、監督が鬼才といわれているのがよくわかる。
古き良き(?)時代に戻った感じ。映画館の雰囲気も良かった。

ネタバレ！ クリックして本文を読む
フランス映画にハマりだしそうなので女は女であるの延長線として鑑賞しました。

こちらの映画もまた、終始喧嘩したり言い合ったり見ていて疲れました。女の方こそ実際気が狂っていて、二人して無鉄砲で無計画な逃避行でした。

文学かぶれの自分としては見ていて面白いところといえば、バルザックやらなんやらたまに名前が出てくるので興奮していました。
台詞も歌も美しいと思いました。ぜひフランス語字幕も付けて欲しいような。１つ１つに韻を踏んでいるのか分からないですがフランス語を堪能できました。