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竜馬暗殺 Comments (4)
喜劇では決してない。タイトルの通り国運を左右すべき時の重要人物による高度な政治的駆引きを示す。解釈は特異であるが異様に説得力がある。過去に見たいずれの作品の龍馬と慎太郎より、活きた2人がここにいる。
竜馬暗殺までの3日間を描く。
坂本龍馬と中岡慎太郎の関係性を描く話は初めてみた。
ちょこちょこ出てくる龍馬・当時のネタ豆知識みたいなテロップが笑かす。
終始、緊迫感のある雰囲気を醸し出しながらも原田芳雄演じる竜馬像の呑気さが全体を和ませる。
岡田以蔵の人物像が魅力的だからこそ松田優作の役柄が生まれたのだろう。
新撰組や京都見廻組も絡まずに薩摩藩に中岡慎太郎が刺客とする大胆な解釈を70年代に映し込む凄み。
竜馬を演ずるは原田芳雄のみ!本作と関係は無いが岡田以蔵は萩原健一、ショーケンしか考えられない。
スマホアプリにいろんなフィルターがあります
もし戦前の白黒映画フィルターというものがあったらこのような映像になるのでしょう
その狙いは二つだと思います
ひとつ目はドキュメンタリータッチを追求する
原田芳雄の風体は歴史本に見る竜馬本人の写真そのものぐらい似て見えます
二つ目は戦前の白黒映画と同じ画質で、現代的な演出や現代的な俳優達を撮ってみせることで、同じ地平で比較してなんら劣るものではない
むしろこの実力を正しく評価してくれという野心的なものなのだろうと思います
確かに原田芳雄、松田優作、石橋蓮司、桃井かおり等クセのある役者達が活躍をみせて、戦前の名優達に負けるものではないことを証明していると思います
彼等のその後の活躍がそれを裏付けてもいます
演出も時代劇のお約束的なものは排され、現実的な表現を追求されています
これもまた時代劇の革新であったと思います
竜馬暗殺シーンの迫真性は印象に残るものです
そしてこの時代の青春映画と同様に政治的な意味合いも持たされていると思います
それは内ゲバをテーマにしているのは明かでしょう
70年安保闘争と学園紛争の敗退後、彼らは路線闘争に明け暮れ、仲間内の殺しあいに迄になっていたのです
本作公開時は、連合赤軍の山岳キャンプ事件の後も、大学校内だけでなく、町中の路上で突然鉄パイプによる襲撃事件が続発していたのです
本作の志士達の争いはまさにその暗喩になっています
序盤の京の町中で刀を鉄パイプのように上に向けて集団で一人の侍を襲撃するシーンは内ゲバのシーンそのものです
つまり本作はその内ゲバに対してそれを続けて良いのかという疑問を突きつけるものであり、その情熱を肯定的に描くものでもあります
内ゲバは2000年代に入ってもなお発生しています
団塊左翼老人達はいまもなお、本作のような幕末の斬り合いの中に生きているのかも知れません
そして1961年の今村昌平監督の豚と軍艦と同じく国民を豚に見立てるモチーフが登場します
また、ええじゃないかを無知蒙昧でムードに流されて意味も分からず騒ぐだけの存在として描き、彼らの政治闘争への理解を示さない国民への蔑視の視線を向けています
この姿勢である限り国民が彼らの思想運動への理解も賛同や協調など望むべくもないことを露呈しているのです
21世紀に生きる私達から見れば、まさに本作の映像のような古色蒼然とした信じられない世界です
本作を見る意義と意味はこのことを留意してみる事なのだと思います