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ミクロの決死圏 Comments (20)
1966年の作品。
その2年前に放送されたテレビアニメ『鉄腕アトム』のあるエピソードが、非公式の原案とされている。
アメリカでの放送がいつだったかは知らないが、映画製作より前であるとこは確か。
この映画には原作小説のような元ネタがないので、この説は否定しきれない。
ただ、アトムの原作漫画にはそのエピソードはなく、過去の手塚治虫の単独作品をアトム用に脚色してアニメ化したものだった。
要するに、手塚治虫はこの映画の何年も前にミクロ化した人間が人体に入り込むアイディアを作品にしていたのだ。
しかも、医学博士としての造詣を持って。
ただ、潜水艇で入り込むアイディアは、後に手塚が別の作品で拝借しており、手塚自身は「お互い様」だと言っている。
アイザック・アシモフの小説は原作ではなく、映画のノベライズ。
SFの大家らしく、映画のいい加減な部分を見事に理屈付けしているので、一読の価値あり。
アシモフは、手塚や藤子不二雄、石ノ森章太郎らが崇拝したSF作家の一人で、『鉄腕アトム』における「ロボット法」はアシモフの『ロボット工学三原則』へのオマージュだ。
そういえば、ウルトラセブンが少女の体内に入って寄生する宇宙人と戦う話があるが、その少女役は松坂慶子だった。
以上、余談。
映画のオープニングはスパイアクション風で、50年代のギャング映画の趣もあって画作りがよい。
秘密の施設は地下にあると相場が決まっている。車が地下へ降りていく特撮は、その後の潜水艇ごと縮小させるシーンと同様に単純な合成だが、うまく使われている。
人体の中の描写は幻想的で、宇宙家族ロビンソンが不時着した怪しげな惑星のように手作り感があって、想像と工夫の粋が発揮されている。
抗体や白血球がクリーチャーとして襲ってくるというアイディアは、手塚の模倣を越えて大胆な表現。
ドナルド・プレザンスは、医師を監視する役目で潜水艇に乗り込むが、閉所恐怖症だったというのは、なんともお粗末。
ラクエル・ウェルチのスウェットスーツが色っぽく、抗体に襲われ呼吸困難で悶え苦しむウェルチの全身から、クルーみんなで抗体を剥ぎ取る場面がなんともエロチックで、テレビの洋画番組で初めて観たときから脳裏に焼き付いている。思春期だった。
時間制限のスリルと、未知の世界の脅威、裏切りのサスペンスと、飽きさせない構成。今となってはやや中弛みな印象はあるものの、物語自体も面白くできている。
最後に、涙の波に押し出されてきたクルーをスライドガラスで受け取る描写なども、面白いアイディアだ。
体内に残してきた潜水艇は、元の大きさに戻る前に白血球が全て消滅させてくれるのか心配なところだが、そこはアシモフの小説が納得させてくれる。
娯楽作らしい矛盾点は目につくものの、そのジャンルを越えたエンターテイメント性の追及によって今でも充分楽しむことの出来る大作だ。
初めて観たときは人体内部に潜航艇で入る突飛な発想、赤血球や抗体の浮遊する血管内の映像に目を見張ったものだった。BSでやっていたので録画して再鑑賞。リチャード・フライシャー監督は深海ばかりか体内まで潜っって見せるのだから監督冥利に尽きるだろう。後に知ったことだが手塚治先生が1948年に「吸血魔團」という漫画で小さくなって肺の結核菌と戦う物語を既に描いていました、さすが医学博士ですね。
もっとも一寸法師や親指トムなど人が小さくなる話は昔からありますし怪獣が年々巨大化するように縮小化も進み最近ではアントマンが量子のサイズまで到達していますからSFの流れとしては普遍のテーマなのでしょう。
「音を立てるな」のシーンではこちらも思わず息を止めてしまいましたが、お約束通りドジな看護婦がやってくれます。裏切り者も割と早い段階からもろばれですし、やはり見どころは医師監修による特撮プロットにつきるでしょう。肺から取る酸素分子の大きさとかリンパ球に食べられた後の潜航艇が元に戻らなかったの何故とか謎はありますがミクロ化自体が不可能を可能にしているので何とでもできるでしょう、ただ蟻さんを潰さなかったのは良いのですが研究所に蟻が出てくることや電子機器の多いところでコーヒーはこぼすし、葉巻は吸い放題なのはお行儀わるくて頂けませんね、劇中でも肺が煙で汚れていると言っているのに砂糖の取りすぎは注意しても煙草はお構いなし。本作に限らず、良い悪いは別として喫煙シーンの多さで時代がしのばれます。